たとえ事業がうまくいかない場合でも、
それは天が教えてくれていると考えなさい〔中村天風〕。〔以下、解説、清水榮一〕人間には生体リズムがある。
理性のリズムと感情のリズムと肉体のリズムがあって、
それぞれ周期が異なる。世の中の景気にも周期的な変動の波がある。
長期的な波(コンドラチェフ循環)と
中期的な波(ジェグラー循環)と短期的な波(キチン循環)があって、
それぞれが異一なる周期をもつて同時進行している。
経済活動に景気変動の影響は免れない。しかも経済活動は、人間主体の活動だ。
同じ仕事をするにも、うまくいくときとうまくいかないときがある。
めぐりあわせというものだ。いいときは、波に乗ってぐんぐんやればいい。プラスがプラスをよんでいくだろう。
ただし、好事魔多し、油断大敵。初心忘るべからずである。悪いときは、じたばたせぬことだ。
無理強いするとマイナスがマイナスをよぶことになる。
反省の機会でもあるし、周辺を整える機会でもある。
また次のプラスに備えて十分に養生する尊い期間でもある。しかし景気が良くても、うまくいかぬときがある。
逆に不景気でも成績を上げているところがある。
こうなると事業がうまくいく、いかないは、景気や人のせいばかりとはいえない。
それを運のせいにしても、何も始まらない。結局、仕事をしているのは自分だ。
思うままにいかないとき、苛立ったり弱気になっ
たりする前に、「天が教えてくれている。天が授けてくれた絶好の機会だ」
と思うがいい。
「雨降って、地固まる」のたとえもある。
成功している経営者というのは、ある新聞社の調査によれば、
七五パーセントの人が、若いときに、深い挫折を味わっていたという。
病気療養で一年以上も入院していたり、左遷されて窓際に坐ったままだったり……。同僚仲間が、バリバリ仕事をして出世していく中で、ひとり取り残された孤独感。
しかし経営者は言う。
「あの時、時間があったので色々と人生の本をよんだり、
考えたりする時間がたくさんありました。
もしあのようなことがなければ、今の私はありません」と。そのとき不運だと思ったマイナスの阻害要因が、何年か経ってふり返ってみると、
実は今日の自分を作ったプラスの促進要因であったことを思い知らされることがある。何が幸いかわからない。大事なことは、どんなに意にそぐわない嫌なことがあっても、
こと志と違う結果に遭遇しても、「天のメッセージ」だと思って絶対積極の心を失わぬことだ。
いかがでしたか? 最近、コロナ禍など、先行き不透明で不景気な状況が続いていますが、
今こそ、天風先生の名言に学びたいものです。
中村天風 運命を拓く65の言葉
清水 榮一/著 本体1,000円 ISBN:978-4-8454-0976-1
故・清水榮一(天風会専務理事)が語る珠玉の天風語録を愛弟子ならではの貴重な経験も踏まえて紹介。
東郷平八郎、ロックフェラー三世、尾崎行雄、稲盛和夫、松岡修造など多数の著名人に師事され続ける、天風哲学とは。
起業家、ビジネスマン、政財界人に根強い人気の天風語録を新書サイズで。
1 自分が運命の主役なのだ
2 笑顔をしてごらん。嘘でもいいから笑ってみるんだ
3 「ああ、そうだ」と気のついた時がスタート
4 仕事をするなら一流をめざせ、プロに徹せよ
5 心が体を動かしているのだ
6 あなたは一人ぼっちではないはず
7 家族とは、神が定めた修業の場
8 言葉によって心が生きる
9 時が来れば必ず道は開かれる
10 生きていることに感謝しよう
著者について
清水榮一(しみず えいいち)
1931年1月8日~2010年6月10日。神戸市出身。関西学院高等部、慶応義塾大学経済学部卒業後、1968年、産能大学経営管理研究所入職。その後、産能大学総合研究所主任研究員および同短期大学教授、並びに財団法人天風会専務理事を経て、山王総合経営研究所所長、聖琳会山王塾、心哲学会代表を務めた