自分は自分。「心地よい自分」でいるのが一番です。

子供の頃、ムーミンが大好きで、

特に、父に買ってもらった

『ムーミン名作絵ばなし かえってきたノンノン』(講談社)

という絵本は宝物でした。

 

私の名前には「の」がついているので、

密かに「私はノンノン」と思っていたし、

なぜ、私のことを誰も「ノンノン」と呼んでくれないのか不思議に思っていました。

 

当時の私は、「乙女全開・ぶりっ子丸出し・ピンク色が大好きな夢みる少女」でした。

そんな私を家族も、近所の人たちも「女の子らしい」「かわいいね」と誉めてくれました。

 

ところが小学校にあがると、私の環境は一変します。

痩せぽっちで背も低く、そのくせハスキーの低い声。

 

「お前、男みたいな声だな」「おとこ女」と男の子たちから

からかわれるようになったのです。

 

今思えば、男の子たちは、本当にからかっただけ。

悪気があったわけではないのでしょうが、やはり7歳の女の子は傷つきます。

 

「そうか、私はもう『夢みる少女じゃいられない』のね」と決意し、

泣いてなるものかと、歯を食いしばって、男の子たちを睨みつけ、

力では負けるが、口では負けないと、男の子たちをマシンガントークで圧倒。

 

そうして、私の「強い女・怖い女のキャラ」は、

小学2年生にして完成してしまったのです。

 

「あれ? 私、乙女だったはずなのに……」

「あれ? 最近、可愛いって言われてないけど……」

 

頭の中は「?」でいっぱい。

 

しかし、一度完成したキャラをモデルチェンジするのは難しく……。

 

いつの間にか、自分でつくった「強い女・怖い女のキャラ」設定が、

「本来の私のキャラ」と逆転してしまったのです。

 

そうなると、どんどん心は荒んでいきます。

「どうせ、私みたいな可愛くない女の子に、ファンシーなものなんて似合わない」

「どうせ、私みたいな男みたいな声の女の子が、かわいい話し方をしても似合わない」

そう思い込むようになっていきました。

 

「おとこ女」事件から数年後、

相変わらず、こじらせていた、高校1年の春、

ある出来事が起こります。

 

違う中学からきた「のりこ」という名前の同級生が

友達から「ノンノン」と呼ばれていたのです。

 

「なにがノンノンよ、ノンノンと程遠いじゃん」と

心の中で叫び、「のりこ大嫌い」と、一方的に絶交を誓いました。

(実際には絶交はしていません。心の中での絶交です)

 

同時に「ムーミンをはじめとする“かわいいもの”すべて」を

封印することにしたのです。

 

そしてその「ノンノンショック」から

私のこじらせ具合は悪化の一途をたどります。

 

「どうせ」私はかわいくないのよ。

「どうせ」みんなだってそう思っているのよ。

「どうせ」私は強い人って思っているんでしょ

「どうせ」私は怖い女なんでしょ

 

「どうせ」「どうせ」と下ばかりを見て、

「自分はこういう人」と自分で決めつけ、

自分で作り上げた「キャラ」にがんじがらめになっていたのです。

 

そりゃ、生きづらいです。

「本当の私は違うのに」

「誰もわかってくれない」ってぐるぐるします。

 

 

私の場合はある種、

自己防衛のために「自分で作り出したキャラ」ではありますが、

子供の頃、「親や先生といった大人たちから、植え付けられた

キャラ」というのもあるのではないでしょうか。

 

「あなたは長女だから」

「あなたは女の子なのだから」

「あなたはいつも明るい子だから」

「あなたは兄弟思いの子だから」

「あなたはモテる子だから」

「あなたはリーダーシップのある子だから」

 

「本当は違うのになあ」と思いながら、

大人の期待に応えて、キャラを演じてしまった経験はありませんか?

 

そうして、演じ続けているうちに

「私はこういう人」という、キャラ設定をしていませんか?

 

そんなことを会社の人に話をしたら、

 

「ノンノンって呼んでほしかったら、そう言えばよかったのに。

僕は、マッチ(近藤真彦さん)がかっこいいなあと思ったから

『今日から僕をソッチ(そうすけ)って呼んで』って

クラスメイトの机にメモを置いたの。

そしたらみんなその日から『ソッチ』って呼んでくれたよ。

いまだに『ソッチ』って呼ばれているよ」

 

と教えてくれました。

そうなのです。

「私をノンノンって呼んで」と自分で言えばよかったのです。

たったそれだけのこと。本当に、それだけのことだったのです。

 

でも恥ずかしかった、怖かった。

「ノンノンって呼んで」と言って、笑われたらいやだなって思ったから。

 

「おとこ女」ってからかった男の子たちにも、

やり返すのではなく、「そんな風に言わないで」って言えばよかったのです。

 

「自分はこういう人だから」という固定観念があるとするならば、そのほとんどは思い込みです。

ちょっとしたボタンの掛け違いや、ちょっとした勘違いが原因です。

 

だから自分史をどんどん紐解いていくと、

「あ、ここで間違えたな」というポイントが見つかります。

そのポイントが見つかったら

その時の自分にタイムスリップして、やり直してみましょう。

現実にはやり直せないけど、そうイメージしてみるのです。

「そんな風に言わないで」

「ノンノンって呼んで」

私も、当時に戻ったつもりで、イメージの中で、そう言ってみました。

そして

いまの私はといえば、

子供の頃と同じ、本来の私である「乙女・ぶりっ子キャラ」復活です‼

 

ムーミン大好き、ピンク色大好き。

小さいお花が好きで、ふわふわしたものが好きで、

たびたび夢見がちでたたずむ私

同僚から「ギョっ」とされることもありますが、無視。

 

それでもいいのです。

 

「楽な自分」で生きていきましょう。

世間の人は、いろいろ言ってくるけど、結局何もしてくれません。

 

「自分は自分」

「心地よい自分」でいるのが一番です!

〔文/編集者T〕