おうちご飯におすすめ!おばあちゃんが教える 美味しい漬け物

【『「ふくしま」のおばあちゃんが教える
美味しい漬け物の作り方』
著者:神野 栄子 先生からのメッセージ
――著者から皆さまへ 第8回】

まだまだ新型コロナウイルスと戦う試練の日々が続いていますが、
皆様いかがお過ごしですか?

 

コロナ禍でホームステイを余儀なくされ日常生活が一変しました。

「おうちご飯」が増えてマンネリ化した食卓も

見直されたのではないでしょうか。

 

在宅時間が増えて手作り料理にも気合いが入り、

とりわけ食卓に欠かせない漬け物の人気が高まっています。

 

「自前の野菜でおいしい漬け物を作ろう」と

家庭菜園を始める人が増えています。

 

野菜や花とのふれあい、自前の漬け物に舌鼓を打つ暮らし‥‥、

コロナ禍のうつうつした気分も晴れることでしょう。

 

いま日本の食料受給率はわずか三〇%台です。

野菜作りに目が向いたことは

将来の食糧難に備えるきっかけづくりになると思います。

 

私は高校卒業まで福島県二本松市で過ごしました。

実家は米農家で、曾祖父母までいる大家族でした。

 

四季折々の山菜や野菜を使ったひなびた料理ばかりで、

現在のように飽和状態ではありませんでした。

 

拙著『「ふくしま」のおばあちゃんが教える 美味しい漬け物の作り方』では、

祖母や母が作っていた漬け物や郷土料理、

義母や義姉、叔母たちから教えられたふるさとの漬け物などを

思い出し、再挑戦しながらまとめてみました。

 

雑誌などで「おいしい情報」を見つけると、すぐに作ってみる性分です。

それがいつの間にか得意メニューになったものもあります。

 

私は料理研究家でもフードコンサルタントでもありませんが、

祖母から母に、孫の私に伝えられた郷土の味は時が経つにつれ、

貴重な宝となりました。

 

伝統料理の味をひ孫にまで伝えたい──そんな思いをこめて私が案内役になり、

「ふくしま」の美味しい漬け物や郷土料理を作りながら紹介しました。

多くの方々が参考にしてくださればうれしい限りです。

 

「作り方が違うかも」という声もあるかもしれませんが、

漬け物や料理はその人のアイデアで

「おいしくなるように進化させていくもの」と考えています。

ですから、こうあらねばならないという決まりはないと思うのです。

「自分流で、おいしければよし」です。

 

十数年前から夫と家庭菜園を楽しんできました。

採れたて野菜を近所にお裾分けをして喜ばれるのも励みでした。

漬け物もたくさん漬けましたが、五年前に夫が他界してからは、

私が見よう見まねで野菜作りをしています。

 

独り暮らしになってからは量を作らず、

食べきりサイズの「ジッパー付保存袋漬け物」にこだわっています。

野菜と塩、出汁(だし)しょうゆ、みりん、酢といった調味料があれば、

誰でも簡単においしい漬け物が

ひと晩、いや一時間でも食べられます。

 

料理専門家ではないのでレシピの分量などもおおざっぱ、

プロから言わせれば邪道かもしれませんが、

分量に縛られると料理がいやになります。

とにかく野菜を漬けてみましょう!

 

全国津々浦々、ご当地自慢の漬け物や郷土料理がたくさんあります。

本書は、タイトルも含め私の郷里、ふくしまの漬け物をとり上げましたが、

夫が山形県羽黒町出身でしたので、

山形の漬け物など、ふくしま以外のおいしいものも紹介しています。

北国の味覚が食卓のヒントになれば幸いです。

 

【簡単ぬか漬け】

 

ぬか漬けはとにかくこまめな手入れが決め手です。

毎日一、二回はよくかき混ぜなければなりません。

 

発酵食品ですから注意していないと、

ぬか床にカビがはえたりします。私も何度もぬか床をだめにしました。

 

最近は「野菜を漬け込むだけでOK」という

ぬか漬けビギナーにはうれしい「熟成ぬか床パック」もあります。

 

さっそく市販の「ぬか漬けの素」にキュウリやカブを漬け込んでみました。

約半日漬けて、塩加減のよいまろやかなキュウリとカブのぬか漬けができました。

 

マチ付きのパックは冷蔵庫の野菜室の隅に収納できるので便利ですし、

ぬか漬け特有の臭いも少ないのでビギナーには扱いやすいと思います。

 

ただ冷蔵庫に入れておくと、常温よりも漬かるのに時間がかかるようです。

❶ぬか床に野菜を入れます。

❷便利で簡単なぬか床でも、毎日使い、時々かき混ぜること。

❸長く使っていると野菜の水分も出てきますから、
スポンジで水気を取ったり、ぬかの補充など日々の手入れをすると、
おいしく食べられます。

 

 

【三五八漬け】

 

福島、山形、秋田県には

麹に漬けた「三五八漬け(さごはちづけ)」と呼ばれる

ふるさとの漬け物があります。

 

塩を、米麹を、米をの割合で

漬け床を作ることから「三五八(さごはち)」と呼ぶそうです。

 

母が元気なころは麹室で麹を作り、

三五八の漬け床や味噌を作っていました。

 

お盆に実家に帰れば、

ぬか漬けではなくキュウリやナスの三五八漬けが

食卓に並びました。懐かしい味です。

 

❶家庭で作る時は甘酒を作る要領で、一合のご飯を柔らかめに炊きます。

❷そこに市販の麹二〇〇グラムをほぐして加え、よく混ぜます。

❸炊飯器を六〇度くらいで保温すると、糖化してきます。

❹炊飯器のフタを開けて、濡れふきんをかけて発酵させます。

❺三時間くらいで発酵します。
塩五〇グラムを加えてジッパー付保存袋に移します。

❻三日ほど冷蔵庫に置いて熟成させます。

❼麹の香り漂う、ねっとりとした漬け床に、
キュウリやダイコン、ナスなど好みの野菜を漬け込みます。
上品な甘味と発酵食独特の深い旨味が口の中に広がり、
後を引くおいしさです。

秋田県ではハタハタの三五八漬けがよく知られています。

塩麹のように魚や肉も漬け込んで、

発酵食の旨味と栄養を堪能できるのです。

 

◆「三五八の素」を使って

漬け床を作る手間が、という時には

スーパーなどで「三五八の素」も市販されています。

 

水を入れるだけで簡単に漬け床ができます。

漬け床をジッパー付保存袋に入れて野菜を入れれば、

簡単に三五八漬けが完成します。

半日ほど漬け込めば浅漬けが食べられます。

 

【イカニンジン】

 

福島県人に「代表的な漬け物を教えて」と聞くと、

ほとんどの人が「イカニンジンよ」と答えます。

 

年中作っているようですが、

とりわけ、正月のおせち料理には欠かせないひと品です。

 

ニンジンとスルメイカ、しょうゆとみりん、酒で漬けるだけなのに

二日ぐらい漬けると、まぁスルメの旨味がニンジンにしみ込み、

ニンジンのシャキシャキ感と相まって「うまい!」の一言に尽きます。

 

❶ニンジンの切り方などはその家の作り方でよいのです。
あまり太いと食感が悪いので、
私は長さ五センチ、幅二ミリ程度の短冊切りします。

❷スルメも同じように切ってから、
酒に三〇分くらい浸して柔らかくします。
これも自由。出汁昆布も同じように切ります。
私はしんなりした方がよいので少し長めに酒に浸けるようにしています。

❸ニンジンは生でよいのですが、
湯通ししたほうがニンジンの臭いもなくなり、
漬け汁がしみやすいと思います。
火を通したらザルにあけて冷まします。

❹漬け汁はコップ半分くらいのしょうゆ、
コップ三分の一くらいのみりん、
スルメを浸した酒を合わせてサッと煮たてて冷まします。

❺ニンジン、スルメ、出汁昆布をジッパー付保存袋に入れて
漬け汁を注いで揉み込み、空気を抜いて冷蔵庫に保存します。

翌日に食べられますが、三日以上漬け込んだ方が

スルメの旨味がしみ込んで美味しくなります。

 

【ナメコのたまり漬け】

 

秋はキノコのおいしい季節です。しかも低カロリーでヘルシー、

食物繊維やビタミン、ミネラルを豊富に含んでいることから、

キノコパワーが注目されています。

 

かつて、父がクヌギなどの原木にシイタケ菌を埋め込んで

シイタケ栽培をしていましたが、

よく生えてくるのにはびっくりしたものです。

 

大きなナメコも作ったりしていました。

普段は煮たり焼いたり揚げたりのキノコレシピですが、

ナメコを漬けてみると、これがなかなか美味しい。

 

私流は簡単です。

❶ナメコ一袋をサッと茹でます。

❷めんつゆ大さじ二杯、砂糖、みりん少々を合わせ、漬け汁を作ります。

❸ナメコと漬け汁をジッパー付保存袋に入れて冷蔵庫で保存します。

 

数時間で食べられます。

「ナメタケ」と同じように、ご飯にかけたり、

酒のつまみでいただきます。

 

ダイコンおろしを添えるとおいしさアップ、

胃にもやさしいつまみになります。

 

◆エノキタケのナメタケ

エノキタケで「ナメタケ」を作りました。

❶石づきを切り落とし、エノキタケを二等分し、パラパラにほぐします。

❷めんつゆ大さじ三杯、昆布だし、砂糖、みりん、好みで酢少々を

合わせた漬け汁にエノキタケを入れて一分ほど煮ます。

❸冷ましてジッパー付保存袋に入れ、空気を抜いて冷蔵庫で保存します。

好みでショウガの千切りや輪切りの鷹の爪を加えて

「マイ・ナメタケ」を作りましょう。

冷蔵庫で五日程度、冷凍で一カ月ほど保存できます。

 

 

〔寄稿/伝統漬け物案内人:神野 栄子


『「ふくしま」のおばあちゃんが教える
美味しい漬け物の作り方』

神野 栄子/著 本体1,100円
ISBN:978-4-8454-5132-6

造本:ロング新書

ジッパー付き保存袋でつくる!
「ふくしま」のおばあちゃんが教える
美味しい漬け物の作り方

面白いくらい簡単にできる
四季折々の山菜や
季節の野菜を使った、
故郷に伝わる83のレシピ

イカニンジン・三五八漬け(さごはちづけ)
ナメコのたまり漬けなど
体に優しい発酵食のおうちごはん

●伝えたい、守りたい「ふくしま」の味

春の漬け物
・フキ味噌
・菜花の辛子漬け など

夏の漬け物
・ラッキョウ漬け
・キュウリの梅酢漬け など

秋の漬け物
・シソの実の袋漬け
・柿の皮のハクサイ漬け など

冬の漬け物
・ユズ巻きダイコン
・自家製福神漬け など

私は料理研究家でもフードコンサルタントでもありませんが、
祖母から母に、孫の私に伝えられた郷土の味は時が経つにつれ、
貴重な宝となりました。
伝統料理の味をひ孫にまで伝えたい──そんな思いをこめて
私が案内役になり、「ふくしま」の美味しい漬け物や
郷土料理を作りながら紹介しました。

福島県の農家出身の著者が、四季折々の山菜や季節のお野菜を使った、
美味しくて簡単につくれる漬け物の秘伝のレシピを、春夏秋冬別に大公開。
最近増加中の「自粛でおうちご飯を充実させたい!と思う人」
「三密をさけ、家庭菜園や山菜採りを楽しむ人」待望の一冊。

*

もくじ
はじめに

【春の漬け物】

1春キャベツの浅漬け
2フキノトウの甘酢漬け
3ウドの漬け物あれこれ
4簡単ぬか漬け
5たくあんの古漬け
6ハクサイの古漬け
7フキ味噌
8カブのあちゃら漬け
9キュウリのワサビ漬け
菜花の辛子漬け
アサツキの酢じょうゆ漬け
〈春の郷土料理〉
●ダイコン炒り
●山菜の天ぷら
●フキの煮物
●フキの佃煮=きゃらぶき
●ウドの皮のきんぴら
●ワラビのおひたし
●ゼンマイの煮物
●身欠きニシンと切り干し大根の煮物
●ヨモギ団子
●庄内の笹巻き
●月山筍の粕汁
始めよう! 野菜作り【春】

【夏の漬け物】

1三五八漬け
2梅干し
3キュウリの梅酢漬け
4ラッキョウ漬け
5キュウリのしょうゆ漬け
6青シソの塩漬け
7薄皮丸小ナス漬け
8夏野菜の即席漬け
9薄皮丸小ナスの辛子漬け
しなべキュウリ
塩かけトマト
〈夏の郷土料理〉
●冷やし汁
●豆擦り餅
●宿坊のゴマ豆腐
●蒸しナス
●鶴岡のだだちゃ豆
●かまど焼きトウモロコシ
●カレーじゃが
始めよう! 野菜作り【夏】

【秋の漬け物】

1秋カブの漬け物
2江釣子漬け
3 味噌漬け あれこれ
4シソの実の袋漬け
5柿の皮のハクサイ漬け
6庄内柿のダイコン漬け
7長イモの浅漬け
8菊の酢漬け
9ナメコのたまり漬け
たくあん──三五八漬け
ぜいたく漬け
イモガラの酢漬け
夏野菜の粕漬け
サンマの味噌漬け
〈秋の郷土料理〉
●きらず炒り
●二本松のざくざく
●納豆餅
●イナゴの佃煮
● だんご汁(すいとん)
●車麩と切り昆布の煮物
●干し柿
●ひき菜炒り
始めよう! 野菜作り【秋】

【冬の漬け物】

1イカニンジン
2正月を祝うダイコンの漬け物
3キクイモの浅漬け
4赤かぶ漬け
5兵頭なます
6下仁田ネギのしょうゆ漬け
7ダイコンの焼酎漬け
8 簡単! 濃厚キムチ
9キノコいとこ漬け
自家製福神漬け
ゴボウ節
〈冬の郷土料理〉
●具だくさん雑煮
●煮豆のごちそう
●三日トロロ
●凍み餅
●庄内の雑煮
●どんがら汁
●棒ダラの煮物
●甘酒
●リンゴ料理

著者について
神野 栄子(カンノ エイコ)
1944年、福島県二本松市生まれ。
東洋大学文学部国文科卒。
雑誌、ミニコミ紙の編集を経てフリーに。
婦人誌、新聞などで取材活動を続ける。
現在、ブロック紙の伝統芸能ライター。
趣味は家庭菜園と漬け物作り。
著書に、
『もう一度外で働きたい!』(弊社刊)
『いきいき高齢出産——仕事も子どもも諦めない』(双葉社刊)
などがある。