テレワーク時代における労務管理のヒント

【『「ブラック企業」とゼッタイ言わせない
松井式超!働き方改革』
著者:松井一恵先生からのメッセージ
――著者から皆さまへ 第2回】

こんにちは。

『「ブラック企業」とゼッタイ言わせない 松井式超!働き方改革』の著者、

松井一恵です。

2020年も年末を迎えておりますが、今年は何と言ってもコロナの年。

人よりもずっと小さなこの生き物に翻弄され、
真夏にマスクを着けて通勤することになろうとは、年のはじめには想像もつきませんでした。

コロナは今まで私たちがうっすら気付きつつも後回しにしてきた問題を
一気に表面化させましたね。

職場でいえば、例えば、通勤。社員が会社から遠方に住んでいる場合、
当然、アクシデントで通勤できなくなる確率は高くなります。
台風や地震があるたびに、みんな何となく「まずいなぁ」とは思っていたのです。
本気で手を打つなら、勤務先の近くに社宅を完備したり、
そもそも通勤しなくても仕事ができるように
テレワークのシステムを整えておくなどできたはず。

ただ、コストも手間もかかる割に、しょっちゅう地震が来るわけでなく、
なんとなく後回しにされてきました。
それがこのコロナ禍で一気に顕在化し、特にテレワークは一般的になりました。
「うちの会社はまだ出勤して来いっていうのよ、ブラックだわぁ」という会話は

冗談ではなくなり、
テレワークを体験した私たちのほうにも気づきがありました、

「あぁ、出勤しなくても仕事はできるんだ」と。
コロナ禍で変化した一連の価値観は元に戻ることはありません。

営業は訪問しなくてもWEBでできるし、一か所に集合しなくても会議はできる。
出勤不要で出張不要。
しかも、WEB営業もWEB会議も失礼ではなくなりました。
感染症予防の観点からいえば、むしろ、好ましくすらあるわけです。
効率が良く、失礼にならず、コロナリスクも減るのなら、
会社も社員も不便な過去に戻る必要はありません。

では、労務管理は…。この変化に追いつけているでしょうか。
良いも悪いも、日本の賃金は労働時間を基準にした従量課金制が主流です。
遅刻をすれば賃金はカットされますし、残業は時間が長いほど残業代が加増されます。
会社に来て、タイムカードを打っているからこそ、賃金は確定します
(仕事の出来ばえは別として)。

これをベースに給与規程が成立しているわけですが、社員が社外で仕事をするなら、
会社は何を基準に遅刻控除や残業代を計算するか決めておく必要があります。

そう、今のこのような状況に合わせて労務管理の方法も早急に考えなおしていく必要があります。

拙著『「ブラック企業」とゼッタイ言わせない 松井式超!働き方改革』では

営業職を切り口にして「事業場外のみなし労働時間制」を取り上げましたが、
これはそのまままさにテレワーク勤務でも使えます。

出勤がどうしても必要な業種では、「フレックスタイム制」を使うことによって、
社員の在社時間を分散し、満員電車での移動を避けることができます。
これも労働時間を1か月単位で管理するより3か月単位で管理する方が
より社員の分散勤務を促すことができます。

育児とワークライフバランスの節で取り扱った「フレックスタイム制」ですが、
取るべき手続きはコロナ対応でも全く変わりません。
テレワークとフレックスタイム制のハイブリッドが馴染む会社もあると思います。

そのほかにも、日常の労務管理で利用できるちょっとしたヒントやコツを
ちりばめて書いたつもりです。
どうぞ、使えるところだけアレンジして利用していただけたら幸いです。

職場を元気に、みんなでコロナを乗り切りましょう!

〔寄稿/社会保険労務士:松井一恵〕


『「ブラック企業」とゼッタイ言わせない松井式超!働き方改革』
松井 一恵/著 本体1,300円 ISBN:978-4-8454-2435-1

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著者について

松井一恵(まつい かずえ)
社会保険労務士。OfficeM代表。一般社団法人フロンティア常務監事。
大阪府堺市生まれ。関西大学法学部法律学科卒業。
平成11年金融機関、生保系人材派遣会社勤務、司法書士事務所勤務等を経て、社会保険労務士資格登録。
平成12年社会保険労務士として独立開業。以降20年にわたり担当したクライアントは100社以上にのぼる。
「会社は絶対守る。会社を守ることは社員を守ること」を仕事のポリシーとし、これまで多くの中小企業に寄り添ってきた。
企業顧問や労務管理に従事するかたわら、就労支援、シルバー世代の社会参加、男女共同参画等の人権課題に取り組み、
クライアントもその従業員も満足できる職場風土の醸成、トラブル解決のビジネスコンサルタントとして活動。
平成23年一般社団法人フロンティアを共同設立。従業員40名余を抱える介護事業所の経営者でもある。
また現在は、指名が絶えない人気講師として全国で講演活動もおこなっている。CFP®認定者、特定社会保険労務士、宅地建物取引士。