副業解禁は最強の福利厚生メニュー!!

2018年に厚生労働省が、「兼業副業促進に関するガイドライン」を発表したしました。
そのことがきっかけで、副業を解禁する動きがでています。
サイボウズ、ソフトバンク、ヤフー、サイバーエージェント、ディー・エヌ・エー、
リクルートホールディングス、マイクロソフト、ミクシィ、ロート製薬、丸紅などなど、
(「【大企業編】2018年は副業解禁元年?副業OKの会社一覧」参照)
名だたる企業が、副業制度を開始しております。
そんな副業解禁の流れですが、実は、副業解禁に決まった法的手続きがないことをご存知でしょうか?
今回は、社会保険労務士として活躍中の松井一恵先生がお書きになった
『松井式超!働き方改革―「ブラック企業」とゼッタイ言わせない』(松井一恵 著/KKロングセラーズ刊)
から、副業解禁についてご紹介いたします!(以下、本文より引用)

「副業解禁」はやりたいことにチャレンジできる最強のメニュー

禁止するからバレるのであって……

日本型雇用の特徴は「終身雇用」「年功序列」「企業別組合」でした。新規学卒で企業に就職、職場で教育訓練を受けて年々スキルが上がり、
それにつれて昇給、労働条件の交渉も企業単位で行って、社員が横並びの条件で仕事を続け、
定年退職金をもらったら年金とあわせて退職後の生活をまかなえる。
なかなか良くできたシステムですが、この企業主導型の働き方は社員とその家族の人生全般に責任を持つかわりに……
「退勤後も出勤前もよそで働いちゃダメ」というのが日本の会社の常識でした。
高度成長期はこれで良かったのですが、今や入ってくるものもそれほど上がらないのに、社員の給与だけどんどん上げるわけにはいかず、当然のバランスとして昇給は止まります。
昇給が止まれば社員は余暇で稼ぎたくなる。でも、会社は以前の「よそで働いちゃダメ」のまま。だから、隠れて副業となるわけで、ネット検索してみると「副業 バレない」でたくさんのサイトがヒットします。
副業を禁止するからこっそりする、こっそりするからバレる、知ってしまうと処分をすべきかどうかで会社も悩みが増えます。
ならいっそ解禁してしまえば……そんな流れの中で「働き方改革」の一環として、二〇一八年一月厚生労働省は「兼業副業の促進に関するガイドライン」を発表しました。
ただのお小遣い稼ぎにとどまらず、社員が在職のまま新たな知識や技能を修得することができ、自らがやりたいことにチャレンジできる副業解禁は最強の福利厚生メニューです。
ルール作りを確認しましょう。

原則OKの届出制に

実は公務員以外の民間企業では副業や兼業は法律上禁止されてはいません。副業解禁に決まった法的手続はないのです。ですが、本業で一日八時間の仕事を終えて、
その後に副業をする社員がいたとします。会社としては長時間労働にならないように精一杯配慮していても、他社で働いていれば長時間労働と同じ状況になります。
疲労が蓄積して社員が健康を害したり、ミスや遅刻で本業に支障がでる可能性があります。解禁といえども社員の副業状況は会社として知っておいたほうがよいでしょう。
社員が副業する場合の取るべき手順を就業規則に定めておきましょう。


【就業規則例】
第○条 社員は、所定の就業時間外において、他の会社等の業務に従事することができる。
社員は、前項の業務に従事するにあたっては、事前に、会社に所定の届出を行うものとする。

第一項の業務に従事することにより、次の各号のいずれかに該当する場合には、 会社は、これを禁止又は制限することができる。
1 労務提供上の支障がある場合
2 企業秘密が漏洩する場合
3 会社の名誉や信用を損なう行為や、信頼関係を破壊する行為がある場合
4 競業により、企業の利益を害する場合 前二項の届出をすることなく副業・兼業に従事した社員は、第△条に定める懲戒
処分を受けることがある。


原則OK、社員の健康と会社の信用や利益が危機にさらされるときのみ規制をかけるということで、社員に届出をしてもらいます。
副業のうち他の会社で労働契約を結んで雇われる場合、労働時間は自社と副業の会 社の両方を通算して管理します(労働基準法第三八条)ので、
労働条件通知書など労 働時間が確認できるものを提出してもらいましょう。
長時間労働が予想される場合は、 時間制限をつける必要があります。労働時間管理は雇用する側の義務だからです。

やるかやらないかは自己選択自己責任

副業について届出制をとりましたが、さて、ここで問題がひとつ。
それでもだまって行われる「こっそり副業」をどうするべきか。当然なにかしらのペナルティを与えようということになりますが、気をつけなければならないことがあります。
社内の懲戒処分は後出しで行うことができません。つまり、どんなことを行ったと き懲戒処分になるのかを「予め」社員に明示しておかなければなりません。
前頁の 〈就業規則例〉の4にあるように、無届での副業が処分対象になることを予めはっきりさせておきましょう。
きちんと届出をして行った副業でも、それが原因で遅刻や欠勤を繰り返したり、会社に損害を与えたときには、これも予め定められた就業規則の懲戒規定にしたがって
処分を決めていくことになります。
副業は最強の福利厚生メニューであると書きましたが、やるかやらないかは社員の自己決定にゆだねることになりますし、その結果はすべて社員の自己責任です。
就業規則を十分周知することで、社員とのトラブルを避けたいものです。
【まとめ】副業解禁は最強の福利厚生メニュー。社員の自己実現を応援します。副業に関する法律はないので、就業規則で手順を決めましょう。

いかがでしたでしょうか? 御社の副業制度づくりの一助になれば幸いです。

『「ブラック企業」とゼッタイ言わせない松井式超!働き方改革』
松井 一恵/著 本体1,300円 ISBN:978-4-8454-2435-1

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著者について

松井一恵(まつい かずえ)
社会保険労務士。OfficeM代表。一般社団法人フロンティア常務監事。
大阪府堺市生まれ。関西大学法学部法律学科卒業。
平成11年金融機関、生保系人材派遣会社勤務、司法書士事務所勤務等を経て、社会保険労務士資格登録。
平成12年社会保険労務士として独立開業。以降20年にわたり担当したクライアントは100社以上にのぼる。
「会社は絶対守る。会社を守ることは社員を守ること」を仕事のポリシーとし、これまで多くの中小企業に寄り添ってきた。
企業顧問や労務管理に従事するかたわら、就労支援、シルバー世代の社会参加、男女共同参画等の人権課題に取り組み、
クライアントもその従業員も満足できる職場風土の醸成、トラブル解決のビジネスコンサルタントとして活動。
平成23年一般社団法人フロンティアを共同設立。従業員40名余を抱える介護事業所の経営者でもある。
また現在は、指名が絶えない人気講師として全国で講演活動もおこなっている。CFP®認定者、特定社会保険労務士、宅地建物取引士。