●江戸時代中期以降のヒゲ事情
しかし江戸中期、文治政策が効を奏すると一転して、
ひげはたちまち嫌悪、排斥されて消滅した。剃るだけでは足りず、暇さえあれば毛抜
で抜きとる風習になり、客室には「書院毛抜」なるものが、煙草盆に添えて出してあった。
まるで、「明治のヒゲあり時代から、現代のヒゲなし時代」への移り変わりと、似ていて、
背景には、「争いの時代から平和の時代へ」というキーワードが見え隠れしているようにも思います。
そういえば、徳川15代将軍の肖像をみると、肖像画書かれた年齢にもよるのでしょうが、
初代の家康と二代目の秀忠は、戦国時代を生き抜いてきた武将ということで、ヒゲを生やしています。
三代目の家光あたりからは、ヒゲがなくてすっきり顔の将軍が多くなってきています。
江戸時代大全
稲垣史生/著 本体1,000円 ISBN:978-4-8454-0989-1
第一章 「将軍・大奥」ものしり24の考証
第二章 「大名」ものしり41の考証
第三章 「旗本・武士」ものしり54の考証
第四章 「町人・火消等」ものしり58の考証
第五章 「町奉行・刑罪」ものしり64の考証
第六章 「遊女・男色」ものしり42の考証
第七章 「敵討」ものしり15の考証
第八章 「忍者」ものしり18の考証
第九章 「切腹」ものしり14の考証
第一〇章 「遊侠の徒」ものしり7の考証
第一一章 「剣客」のものしり17の考証
第一二章 「お家騒動」ものしり6の考証
第一三章 「娯楽」ものしり27の考証
第一四章 「風俗」ものしり50の考証
第一五章 「衣服・食物」ものしり38の考証
著者について
稲垣史生(いながき しせい)
時代考証家。明治45年富山県生まれ。
早稲田大学卒業後、東京新聞勤務。
のち時代考証家として大河ドラマ『春の坂道』『赤ひげ』『勝海舟』『風と雲と虹と』などを担当。
昭和50年、第一回放送文化基金賞を受賞。平成8年逝去。
著書に『時代考証事典』『続・時代考証事典』
『考証戦国武家事典』(新人物往来社)、『考証 戦国おもしろ史談』(新人物文庫)ほか多数。